ととこ部屋
特に何もありません
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音楽のお時間 12
「シン君・・・私たちの知らないことが、まだまだあるんだね。宮を守る大変さや大切さが、また少しわかっちゃったな。」
ヘミョンの話を聞いて、涙顔になっていたチェギョンの顔が、何か吹っ切れたように明るくなっていた。
シンも、チェギョンの手をギュッと握りしめ、
「うん・・・姉さんは、僕らのことを心配して一人で耐えてたんだよな。今回のことはいいきっかけになったかもしれない。」
そう答えた。
二人は、固く手を握ったまま、それぞれの思いを胸に長い廊下を歩いて行く。
と、突然、思いついたようにチェギョンが歩みを止めた。
そして、シンの顔を悪戯っ子のように見上げた。
「ねえ、シン君・・・今日は、1限だけで、さぼって帰っちゃったじゃない・・・今から大学に戻るのかなあ?」
シンを見上げるチェギョンの瞳はきらきらと輝き、何かの期待を込めている。
その顔を見るだけで、チェギョンがなにを考えているのかがわかった。
「うまくごまかして・・・デートをしよう。」
「そうこなくっちゃ・・・」
そうと決まれば、作戦会議だ。
廊下の途中から、こっそりと植え込みの中へと入っていく。
二人は、周りから気づかれない場所に腰を下ろすと、何やら相談を始めた。
「宮の方には、大学に戻ったことにして・・・」
「ふんふん・・・」
「大学の方は、ユルとミジュに頼んで・・・ごたごたしているから、今日は休むと伝えてもらう。」
「うん、うん・・・」
「服装は・・・今から、衣装部屋に入って、鞄につめる。」
「そう、そう・・・」
「着替えはどこでするの?」
「映像科の・・・暗室?」
「えっ・・・誰かに見られたら、やばいよ。」
「講義の時間帯なら大丈夫だよ。時間をよく見て行動をする。」
「はい!」
「あまり、長くは出歩けないぞ・・・お前の体も心配だし。」
「そうだね・・・でも、久しぶりだね~~胸がときめくよ・・・もしかして、これユナさんのおかげってことになるの?」
「まあ、そうとも言える。よし、行動開始だ。素早く・・・怪しまれず・・・」
「うん、わかった。」
チェギョンが立ち上がろうとすると、シンはそっとチェギョンの腕をつかんだ。
「どうしたの?シン君。」
チェギョンがシンを見る。
素早くシンはチェギョンにキスを一つ。
「おまじない・・・今日が楽しく過ごせますように・・・」
そして、もう一度さっきよりも深く口づける。
チェギョンもそれに答えて、シンの背中に手を回した。
「よし、行くぞ・・・」
二人は手を取り合って、東宮殿へと向かった。
パビリオンでは、コン内官とチェ尚宮が心配顔で二人を待っていた。
「お待たせしました。突然のことで申し訳ありませんでした。」
シンが二人に深く頭を下げる。
「それで・・・お話の方は・・・」
「はい。大体のことはわかりました。大丈夫です。今から通常通り大学の方に戻りますので・・・よろしくお願いします。」
「はい、では・・・車を回します。」
「私・・・忘れ物があったから、取ってくるね。」
チェギョンは、自分の部屋へと歩いて行く。
部屋に入ると、いつもは美術科の荷物を入れていくバッグに、着替えと変装用のウイッグと、度のない眼鏡を詰めた。
シンも、その間に自分の荷物の準備をし、ユルへの連絡とギョンへの頼みごとを済ませる。
(今の季節でよかった・・・冬だとコートがいるから、秘密デートなんかできないよね。)
チェギョンはそう思いながら、荷物を詰めたバッグをポンとたたいた。
パビリオンに出ると、シンはもう準備を済ませてチェギョンを待っていた。
「では、戻りますので・・・帰りは、いつも通りですね。」
「はい、4時にお迎えとなっています。」
コン内官の言葉に、ちらりと時計を見ると、針は11時を指していた。
大学に着くと、まだ、講義の時間帯なので人影がほとんどない。
「では、また、帰りに・・・」
シンとチェギョンは車を降りると、講義棟へと向かった。
護衛官の視界から消えたところで、急いで映像科の棟へと向かう。
「何だか・・・ドキドキするね・・・」
「黙って・・・急ごう。」
なるべく人目につかない道を通って、裏口から映像科がある棟へと入った。
「いよっ・・・お二人さん・・・」
声のする方を向くと、ギョンとガンヒョンが立っている。
チェギョンはびっくりして、声が出そうになった。
慌ててシンは、チェギョンの口に手をあてる。
「悪いな・・・」
そういうシンの手に、ギョンの車の鍵が渡される。
「まあ、こんなことも・・・たまにはいいんじゃないの。」
ガンヒョンは心底うれしそうな顔をしている。
「アリバイ作りは任せて・・・後で、講義の内容とかもレクチャーしてあげるから・・・持つべきものは友達でしょ。さ・・・行ってきなさい。無理しちゃ駄目だよ。」
「ガンヒョン・・・ありがと・・・」
チェギョンはガンヒョンに抱きついた。
「いいなあ・・・替ってもらいたいよ。」
「変なこと言わないの・・・」
横でいじけるギョンはガンヒョンの肘鉄を受ける。
「ありがとう。行ってくるよ。」
二人は映像科の暗室のある部屋へと入っていく。
ギョンとガンヒョンはさりげなくドアの前で、辺りをうかがった。
「何か・・・音楽の時間に、変な人物が現れてるって、ミジュが言ってたよ。それで、一旦早退したのに・・・今度は、さぼり・・・どうなってんだろうね。」
「そうそう、ジャンもそんなこと言ってたな。でも、お二人の様子からみれば、変な人物に関しては、解決かな。お陰でさぼれてよかったんじゃないか・・・めったにない経験だろうよ。」
「そうだよね。何から何まで管理されてるし・・・卒業したら、皇帝陛下と皇后さまだよ。今までみたいに会えなくなっちゃう・・・」
ガンヒョンは遠くの世界に行ってしまいそうな親友のことを考えると、少し寂しい思いがした。
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コメント
No title
No title
ヘミョンの話を聞いて、解決の糸口が見えてきて安心した二人。
チェギョンの変わり身の早さに、シン君も乗ってきましたね~☆
作戦会議まで開いちゃって、何処に行くのかな~?
この先こんな事はそうそう出来ないだろうから、コン内官、チェ尚宮
後で、発覚しても怒らないであげてね~☆
No title
デートなんですが、完全に遊びに行くんじゃないですよ。
まあ、探りに・・・
若い二人には、これくらい許してください。
No title
まだまだ、修行中の二人です。
自分たちの知らないことを、知りたいと思うこともありますよね。
宮の中ばかりいても、だめでしょ。
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二人ともヘミョンの事を思い、宮を守るという重大さも理解できたのですが。
でもなんで二人で講義をさぼり、隠密にデートなのでしょう。
作戦開始で変装用の服も全て準備完了。
車もギョンの車で。
ガンヒョン、ギョンユル君達もう皆が手助けしています。
卒業したら皇帝陛下と皇后様になるから。
例の件も二人の様子から解決したようだと。
でもこの二人は常に皆の注目の的ですから、
少しぐらい目を瞑りますか(^^)
しかし、後でばれたらどうするのでしょう。
そちらの方が心配ですが。